On The Spot : V.A | エヴァーグリーンをさがして。

エヴァーグリーンをさがして。

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on the spotLP/CD
On The Spot "Nordic At The 1960's Nordic Jazz Scene" /V.A ('06)

先日、某中古レコ屋のヨーロピアン・ジャズ担当・Nさんが退社した。
私の姿を見かけては、貴重な情報(インサイダー?)をあちらから気さくにくださる方だったので、残念でならない。
中古の買い取り仕入れも本人の確かなレコード知識や豊富な人脈あっての激レアな産物も数多く見受けられた。新譜や再発物のディスプレイも非常に分かりやすく、ここまでヨーロピアン・ジャズファンの顧客を歓ばせてくれるレコ屋は他にないんじゃないだろうか、と思わせるほどのプロ意識に感服したものである。
同じ趣味を持つ数少ない者として人脈が途絶えてしまうことはあまりに惜しいと感じた私は、辞められる1週間ほど前にNさんと名刺交換を交わし、いち音楽仲間となったわけです。Nさん、本当にお疲れ様でした。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、あなたがヨーロピアン・ジャズファンを自負するのであれば、憶えていて損はないと思います。ここで過去に紹介したJazz Quintet '60やLars Lystedt Sextetも収録された、奇跡的なコンピレーションがフィンランドのRicky-Tick Recordsから届きました。
Ricky-TickといえばJukka Eskola率いるFive Corners Quintetの名がまず先に挙げられますが、そんなFCQの仕掛人であり、Ricky-Tickのレーベル・オーナー、アンチ・エーリカイネンが選曲を手掛けています。
加えてこの方、北欧ジャズシーンに於いても指折のジャズDJ、それこそ人脈や交渉力なくしてここまでの内容にするには到底不可能であったと思われます。

Disc One/Side One
1.Pia / Staffan Abeleen Quintet
2.A Day in Vienna / The Dexter Gordon & Slide Hampton Sextet
3.Big P. / Kjell Karlsen and his Orchestra

Disk One/Side Two
4.Di-Da / Sahib Shihab and the Danish Radio Jazz Group
5.Mr. Peter / Esa Pethman
6.Buddah / Jazz Quintet '60 ←曲名がミスプリ。正しくはOne More Chant。

Disk Two/Side One
7.Haka Blues / The Otto Donner Element All Stars
8.Piger / Brew Moore
9.Cordon Bleu / Erik Andresen Quartet

Disk Two/SideTwo
10.The Runner / Lars Lystedt Sextet
11.Helsinki at Noon / Christian Schwindt Quintet

では、分かる範囲で解説しよう。
1.PIa / Staffan Abeleen Quintet ('61)
原盤はDebut盤のEP"Soul Time"より。
スウェーデンのモダン・ピアニスト、Staffan Abeleen。
どことなく"Summertime"に似たフレーズも飛び出すテナーサックスが印象的な、ヨーロッパ解釈の正統派オリジナル。

2.A Day in Vienna / The Dexter Gordon & Slide Hampton Sextet ('69)
アルバム"A Day in Copenhagen"(MPS)より。
ヨーロッパのブルーノートと称されるMPSだけあって、アメリカからの来欧者がズラッと顔を並べる豪華メンツ。これは既にハード・バップ名盤なので驚きもしないが、 Art Taylorの本場チンチャカ・ドラム、Dizzy Reeceのペット、Slide Hamptonのトロンボーンはいつ聴いても気持ちが好い。

3.Big P. / Kjell Karlsen and his Orchestra ('63)
シングルEP"Long John Silver/Big P."より。
ノルウェーのピアニスト、Kjell Karlsen。彼を始めとするサイドメンも全くもってお手上げ状態。どうやら50~60年代に地元ノルウェーでローカルに活動したバンドらしいのですが...
演奏の出だしトランペットが「プピッ」とおちょこをかますが、そこはローカルならではの御愛嬌か。演奏自体はどうして高水準なハード・バップ。MPS"Piano×4"の同曲と聴き比べてみても面白い。

4.Di-Da / Sahib Shihab and The Danish Radio Jazz Group ('65)
長らく幻盤とされてきたサヒブのOKTAV盤より。
澤野工房の復刻が記憶に新しい、ダニッシュ・ジャズ当時のオールスターが一同に集った記念碑的作品。このDi-Daという曲はやはり、ニールス・ペデルセンのベース演奏が光る。サヒブが晩年まで取り上げた、いわばサヒブのテーマ曲。

5.Mr. Peter / Esa Pethman ('64)
"The Modern Jazz of Finland"より。
Esa Pethman。マルチ奏者で、コンポーザーも務める。
この曲ではフルートを吹き、ギターとの絡みがなんともヨーロッパ然としている。
この曲に派手さはないが、一枚通しで聴くと、モダン、民族調、シネ・ジャズ風と実にバラエティー豊か。
意外と知られていないアルバムですが、一聴の価値あり、ですよ。
2002年にひっそりとペラジャケで再発されています。

6.Buddah / Jazz Quintet '60 ('62)
Metronome盤の"Buddah"と表記されていますが、実際は最近再発されたFontana盤('63)の"One More Chant"の間違いですから、お間違えのないように。ミスプリかプレミスかははっきりしませんけど。
内容はここではもはや説明不要ですね。

7.Haka Blues / The Otto Donner Element All Stars ('66)
"Parempaan Asumiseen 7"より。
あとから紹介するChristian Schwindt(ds)のリーダー作に参加しているOtto Donner(tp)のリーダー作。

・・・今日はこれまで。-つづく-